グランドキャニオン/©shutterstock

後世につなげたい
アメリカの国立公園
Talk#29. America

一生に一度は見たい絶景が世界には溢れています。
旅が再開されたいま、アメリカの壮大な自然を見に行く準備を始めませんか。

そしてその旅がこの自然を後世に伝える為に
私たちにできることを考えるきっかけの旅となれば嬉しいです。


◆ Profile:
VELTRA あずさ: ベルトラ株式会社 ワイン好きのアメリカ担当

アメリカの国立公園について

突然ですが、アメリカにいくつの国立公園があるのかご存じでしょうか?その数は全部で「63(※2022年5月現在)」。アメリカ全土に広がり、それぞれの公園には特徴があり、同じ場所は2つと存在しません。

アメリカで初めての国立公園が制定されたのは1872年のこと。手つかずの自然とそこに住む野生動物、そして史跡と文化を保存することが目的でした。公園は国によって管理され、園内に入場する際は、必ず入園料が必要です。入場する人数を管理することで、自然環境へ配慮をしているともいえます。


ザイオン国立公園の入口/©shutterstock

ー日本からの観光客に人気の国立公園

◆グランドキャニオン国立公園
みなさんが壮大なアメリカの大自然と言われて思いつく景色、それが「グランドキャニオン国立公園」の景色ではないでしょうか。アリゾナ州北部に位置し、日本からの直行便はない為、ロサンゼルスなどで乗り継ぎしラスベガスへ、そこから車で5時間ほどのところに広大な大地が広がります。

この土地は地殻変動と川や雨などによる浸食が繰り返され、何億年もかけて今の姿となりました。サウスリム(South Rim)、ノースリム(North Rim)、そしてウエストリム(West Rim)という大きく3つの渓谷からできており、サウスリムとノースリムは世界遺産にも登録されています。

サウスリムではマーサポイントやヤバパイポイントなど多くの絶景スポットの整備がされており、車でのアクセスもよい為、小さなお子様からご高齢の方までお楽しみいただけます。またノースリムは雪解けしている夏の時期しかアクセスできず、施設や道もそこまで整備されていませんので、トレッキングや自然を楽しみたい方におすすめです。

そして先住民ワラパイ族の管理下あるウエストリムでは、ヘリコプターの谷底ランディングやスリル満点のスカイウォーク体験などのアクティビティが充実しています。グランドキャニオンはなんといっても何重も積み重なる地層のコントラスト、そして朝日や夕日をうけて赤く染まる大地の姿が圧巻!ぜひ一度は訪問していただきたいスポットです。


グランドキャニオンノースリムからの景色©shutterstock

ーアメリカ人に人気の国立公園

63ものアメリカの国立公園で、日本人から一番人気のあるのはなんといっても「グランドキャニオン国立公園」なのですが、実はアメリカ人の一番人気は「グレート・スモーキー山脈国立公園」という別の公園です。またそれと同じくして「イエローストーン国立公園」も大変な人気を有しています。


◆入園者数NO.1「グレート・スモーキー山脈国立公園」(Great Smoky Mountains National Park)
アメリカの東側、ノースカロライナ州とテネシー州にまたがるこの公園は日本人にはあまりなじみがないかもしれませんが、アメリカの国立公園で最も多くの観光客が訪れる公園です。

園内の90%以上を森林で占めていて、手つかずの原生林やエルクやクマ、そして絶滅危惧種に指定されているサンショウウオなどの17,000種を超える多様な動植物が生息しています。その豊かな自然が評価され、1983年にはこちらもまた世界自然遺産に登録されています。この公園には標高1,800メートルを超える山が16峰もあり、起伏の激しい山々と気象条件により、午前中は濃い霧や低い雲ができやすく、そのもやがかった美しい光景は神秘的です。ちなみにこの霧がかかった景色が公園の名前の由来にもなっています。

園内にはなんと150ものハイキングトレイルがあり、お子様連れのご家族でも参加できる初心者コースから、全長115kmの険しいアパラチアントレイルなどの超上級者コースがあり、体力やレベルにあわせた楽しみ方ができます。サイクリングやカヤック、ラフティングなどの自然を使ったアクティビティやキャンプ施設もそろっています。特に落葉樹が多いこの公園は真っ赤に染まる紅葉を見ることができるので、秋の訪問がおすすめです。


グレートスモーキー国立公園内の豊かな緑と水源
© 2022 MediaValet Inc.

◆世界初の国立公園イエローストーン国立公園(Yellowstone National Park)
1872年、時の大統領ユリシーズ・グラント氏によって指定された世界で初めての国立公園です。ここはワイオミング州、モンタナ州そしてアイダホ州にまたがり、東京都の約4倍、8980㎢の広大な敷地を有しています。

火山地帯の為、多くの間欠泉や熱水泉を見ることができ、地球が生きている事を五感を使って感じる事ができる場所でもあります。オオジカ、クマそしてバイソンなどの野生動物も多く生息しており、1978年には世界自然遺産にも登録されました。

有名なスポット「グランド・プリズマティック・スプリング(Grand Prismatic Spring)」は七色に光る神秘の熱水泉です。ちなみにこの色の正体はバクテリア。水の温度によってバクテリアの生息エリアが異なるので色にも違いがでてくるのだとか。これこそ自然の神秘ですね!


グランド・プリズマティック・スプリング
©123RF

そしてもう一つは「オールドフェイスフル(Old Faithful)」という高さ30~50メートルの高さまで噴出する世界最大の間欠泉です。ここ最近は1~2時間の間隔で噴出しているようですが、ビジターセンターに予測時刻が掲示されているので、チェックしてからスケジュールを立てるのがおすすめです。


オールドフェイスフル
© 2022 MediaValet Inc.

園内ではハイキングやトレッキング、野生動物観察などを楽しむことができ、コースを選べば小さなお子様でも歩いて観光することができます。ちなみに火山地帯なので日本のように温泉もあるのかと思いきや、全て熱水泉は高温の為入浴は絶対に禁止です!


ガイドから聞く現地の今

ここからは日本人に一番人気の高い国立公園、グランドキャニオンの公式ガイドとして25年のキャリアをお持ちのベテランガイド、アダムさんにお話を伺います。

アダムさんはベルトラのコロリエガイドとしても登録されています。日本に約2年ほどの滞在経験があり、野外救命士の資格やアウトドアに関する豊富な知識と流ちょうな日本語で旅行者の方々をお迎えされています。

小さなころからグランドキャニオンを始めとした大自然の中でのアウトドアを経験し、もっと自然を多くの人に感じて欲しいという想いから様々な経歴を経てAdventure Life Inc.を立ち上げられました。

グランドキャニオンの谷底でハイキングやキャンプ体験など珍しいツアーを催行されていますが、資格やライセンスが必要なため現在ラスベガスでこういったツアーを提供できる会社は5-6社のみ。しかも日本語でのツアー会社はアダムさんだけ!というスペシャルなツアーを展開されています。


アダムさん©Adventure Life Inc.

ーグランドキャニオン公式ガイドとしてどんな活動をされていますか?

まずはツアーの提供です!僕のツアーはトレッキングやキャンプなど一般的に言われる「観光」とは少し違い、時には危険も伴うので「安全性」にはとても気を使っています。WFR(野外救命士)の資格を取得したのもその為です。

何よりも一人一人が楽しんでもらえるように気を付けています。僕はここに住んでいるけれど、日本から来るお客さんは一生に1回かもしれない。だからこそ、その時間が最高のものになるようにしたいなと思っていつもガイディングしてます。

それからガイドとしてではないですが「LNT(Leave No Trace)」という団体の活動に、設立当初から積極的に参加しています。例えば自然保護の為の寄付や、ボランティアの人達と一緒に園内の掃除をしたり、岩や木に書かれてしまった落書きを消したりとかですね。

この落書きってやってしまった本人は悪気がなかったりすることがあるんですよ。だからLNTでは最近「Education is the key」といって、対面のイベントはもちろんSNSやオンライン講座なども活用して、自然に対して何が良くて何がいけないといった教育にとても力を入れています。


ツアーの様子©Adventure Life Inc.

ーコロナ前と後で公園内に何か変化はありましたか?

グランドキャニオン国立公園やラスベガス周辺の国定公園にも言えることなんですが、実はコロナ前後であんまり変化はないです。というのも、元々国立公園のレンジャー(管理している人々)による管理だったり、私たちのようなボランティア活動が盛んな場所でもあるからなんです。

「100年前も、今も、100年先も同じ景色を」が国立公園制定の根源なので、そういった意味では園内きちんと管理されていると思いますね。

ひとつ変わった事というと、各公園の人数制限が厳しくなりましたね。コロナ以降も国立公園に訪れる人は年々増えています。人が増えるということはそれだけ車で来る人が多くなり、排気ガスの問題も出てきます。

今までは当日に行って問題なく入園できたのに、今は予約が必要だったりします。もし足を運んでいただく時は、少し余裕を持って計画を立ててもらう方がいいと思いますよ。


ー私たちが国立公園を訪問する時に気を付ける事はありますか?

「Take nothing but photographs, and leave nothing but footprints.」という言葉を知っていますか?

「とっていいのは写真だけ、そして残していいのは足跡だけ」という意味です。

どこへ行ってもそうですが、自然の植物や石なども持ち帰ってはいけないし、傷つけるような事をしてもいけない、それにゴミも持ち帰ることが基本です。とっても簡単な事ですが、こういった事の積み重ねが大切だと思うんです。

僕が案内するトレイルはあまり人が多くない、むしろ人がいないから「大丈夫かな」「本当にこの道なのかな」と思われる方も多いようです。でもそれこそが僕のツアーの醍醐味!

気を付けること...ではないですが、自然を感じる「心構え」を持ってきてもらえればいいかな。僕は朝日や夕日を見るときはよく瞑想をするんですが、それぐらいゆったりとした気持ちになってもらえると嬉しいですね。

実は今年の夏にリピーターのお客さんがラスベガスにいらっしゃるのですが、それがとても嬉しくて、とても楽しみです。これからも多くの方をお迎えしたいですね!


キャンプツアーの様子©Adventure Life Inc.


アメリカへの入国について

アメリカにはどうやって入国するの?取得しておくべきものは?など疑問に思っている方も多いはず。現時点での条件はこちらです。

※2022年5月7日現在

<入国条件>
・新型コロナウィルスワクチン接種を完了した証明(18歳以上)
・フライト出発の1日以内に受けた新型コロナウィルスに関する検査の「陰性」を証明する検査証明書の取得(2歳以上)

<日本への帰国・入国>
・出国前72時間以内の新型コロナウィルスに関する検査の「陰性」を証明する検査証明書の取得
・原則として帰国・入国後に自宅等で7日間の自己隔離。ただし、3日目に新型コロナウイルス検査を自主的に行い「陰性」をMy SOSへ報告することで以降の自己隔離は免除。



あとがき:
わたしがグランドキャニオンに行ったのはもうかれこれ10年以上も前の話。その時に「息をのむ」の意味を初めて理解した気がします。アダムさんを始めとした現地のガイドさんやレンジャーの方々、そして多くの自然を守る人々がいるからこそ今もなお美しい景色が残され、そしてそれが人々の心に残るのだなと感じました。私自身もあの景色を100年後に残すにはいま何ができるか、を改めて考えさせられる機会となりました。



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