グルメ大国が集うアジア。
現地に20年近く住み、旅行業を務めるお二方に
タイとカンボジアの食文化についてお話を伺いました。
――― 移住して約20年。タイ、カンボジアはそれぞれどんな国ですか?
渡辺:もともといろいろな国を旅行するのが好きなんですけど、その中でもタイは食べ物もおいしいし、気候もあったかいし、観光もにぎわっている。仏教の国でおもてなしの精神も根づいている。家族を大事にする「人のよさ」がいいなと思いますね。ひとつに絞りきれない魅力がたくさんあって、訪れる人の心に色を塗ってくれる多彩な絵の具みたいな国。最初は3年くらいの滞在のつもりだったんですけど、もう20年近く住んでいます。
伊東:すごいわかります。僕もそう。とりあえず海外で仕事したいと思っていて、そのチャンスがたまたまカンボジアで。ここの人たちは飾らないし、構えない。やさしくて子どもたちもかわいい。シェムリアップでガイドをやっていたとき、売り子の子どもとも仲良くなりました。
カンボジアは自然体で過ごせる、安らぎを与えてくれる国。出会った人たちが良くて、気づいたら20年経ちました。
――― アジアといえばグルメですが、食にはどんな特徴がありますか?
渡辺:繊細な日本のだし文化と違って、タイ料理は「辛い、すっぱい、甘い」のごちゃ混ぜという感じ。屋台に行ったらテーブルの上にナンプラー(魚醤)や砂糖、唐辛子やお酢が必ずあって、混ぜて食べる文化があります。たとえば、タイのソウルフードである「ソムタム」。千切りのパパイヤ、ピーナッツやエビ、トマトが入ったサラダで、これも砂糖やにんにく、唐辛子を入れて食べます。ヘルシーな見た目ですが味は強烈で、初めて食べたとき一言で言い表せなかったですね。まさに「魅惑のタイランドの味」。食べたことのない人はぜひ食べてほしい。
伊東:パパイヤサラダはカンボジアでも食べますね。あと生春巻きとか。どちらもタイとベトナムのイメージが強いから、カンボジア料理とは言いにくい(笑)。カンボジアは損している国だな~と思います。たくさんおいしいものがあるんですけど、発表できずにいるというか。大半の人が「カンボジア料理ってなに?」って思ってるはず。
――― たしかに。すぐには思い浮かばないですね…。
伊東:基本的には屋台で食べるようなサンドイッチとか揚げもの、焼きうどんなどB級グルメがおいしい。最近だとこぎれいな食堂でも出すようになって、衛生的に安心で観光客にも食べてもらいやすくなりました。
あとフランス領だったのでフレンチもおいしくて安い。カンボジアの伝統料理と融合した創作フレンチもあります。インドや中国の料理も安くて、その国の人が来て作っているので味も本格的。ビールやワインも安いし、住んでいる人間からすると本当にありがたいです。
――― すでにたくさん出てきていますが、特におすすめしたい”現地の味”はなんですか?
渡辺:旬なのはマッサマンカレー(※)かな。ピリ辛だけど、ココナッツミルクやピーナッツが入ってるのでマイルドで食べやすい。チキンの場合もあるし、高級店だと牛タンや鴨肉を使ったりもします。はじめてタイに来る人にはソンブーン(蟹カレー)もおすすめですし、タイはカレーのバリエーションが豊富なので食べ比べもおもしろいんじゃないかな。
※アメリカの人気情報サイトCNNGo「世界で最もおいしい50種類の食べ物(World’s 50 Most Delicious Foods)」でも1位を獲得
伊東:カンボジアは…まずパブストリートに行きましょう!テンションが上がるし、料理がよりおいしく感じるスポットです。
カンボジア料理だけじゃなくイタリアンとか、ひとつのレストランでいろんな国の料理が食べられるし、お店の雰囲気もいい。リピーターなら、ぜひ食堂とか屋台を攻めてほしい。本当のカンボジアの味に触れられるし、旅行に来たならやっぱり「その国を見る」のが醍醐味だと思います。
渡辺:タイは家よりも外食が多いけど、カンボジアもそう?
伊東:家で作りますけど、朝ごはんは外で食べる人が多いですね。豚肉やチキンをのっけたごはんだったり麺類だったり、その日の気分に合わせて。ローカルの人に交じりながら味わう空気感は独特ですし、やっぱり楽しい。ぜひ朝から外に出て味わってほしいです。
――― お店の雰囲気はどうですか?現地の人とのコミュニケーションというか。
渡辺:田舎に行くほど、現地の人が観光客に戸惑う感じはありますね。バンコクも英語のメニューがなかったり、屋台によってはメニューすらない。それでも旅行者が来ると、お店の人は一生懸命指をさしてメニューを教えてくれたり、近くの人が食べているものを説明しようとしてくれる。
「食べさせてあげたい」「自分たちの料理を食べてほしい」という気持ちが強いんでしょうね。すごくやさしく接してくれます。
伊東:それはたしかに感じますね。シェムリアップも観光地なので英語が通じるところが多いですし、外国人慣れしている人もたくさんいる。お店の人だけでなく、周りのお客さんが手伝ってくれたりもします。
渡辺:だから、実際に行ったら食堂とか屋台に思いきって飛びこんでほしいですね。観光客が来ると店員さんもうれしそうだし。おいしかったら、表情だけでもいいからリアクションしてあげるとすごい喜ぶ。
伊東:ほんとに。勇気を出して行ってみてほしい。
渡辺:あ、でもひとつ。辛さには気をつけて!「辛くしないで」って言っても日本とは辛さのレベルが違うので。要注意です。
――― これからも、タイとカンボジアにいたいですか?
渡辺:そうですね。旅行会社で働いて、タイの良さをみなさんにお伝えするのが自分の使命、というか人生なんじゃないかなと思って。そう思うと気が楽になったというか、今は気持ちが充実しています。よっぽどのことがなければずっとタイかな。
伊東:僕は…出る予定ではある。次の国に移ろうと思っていたんですが、ここが一番良くて出られない。いつかカンボジア人だけでできる会社もやってみたいな、なんて考えたりして、このままいる可能性も高いですね。前は40歳までと思ってましたけど、とりあえず60歳まではここにいようと思ってます。次に住むなら海の見えるところがいいな。
渡辺:タイとか?
伊東:タイも大いにあるかもしれないですね(笑)。
――― 最後に、読者のみなさんへメッセージをお願いします。
渡辺:今、世界中から観光客を受け入れる準備を一生懸命しているところです。タイではレストランやホテルのチェックインをQRコードで行い、コンビニでも手をかざすだけで検温ができたりと、世界トップレベルの感染対策をしています。
タイという国はとにかく「人のやさしさ」「人のよさ」にあふれ、それが調味料となっておいしい料理の源になっている。日本に帰るときに必ず「またタイに来たい」と思える課題を残してくれる場所です。自分に対しての新しい発見ができ、「自分って結構何もできない(何でもできる)んだな」ということに気づかせてくれる場所でもあります。今はまだ体調管理をして待っていただいて、コロナが明けたらぜひ遊びにきてください!
伊東:全世界が危機に直面していますが、みんなで乗り越えましょう。旅行できる日は必ず来ます。今は充電期間、予備知識をつける準備の時間。今まではそういう時間もとれなかったり、行こうと思えばどこへでも出かけられました。これからは一つ一つの旅行がより意味のある、もっと価値のある旅行になっていく。旅をより良くしていくための準備をしていきましょう。
アンコールワットなどの遺跡は特に知識があったほうがより楽しめる場所です。オンラインツアーなどは事前学習の場。行った気分を味わうのは、来たる旅の機会にぜひとっておいてほしいです。
みなさんは旅行に行きたくて、僕たちはみなさんを受け入れたい。片思いじゃなくて両思いの状態。互いの思いが重なったとき、一緒に良い旅行をできたら、素敵な思い出ができたらと思います!
――― 本日は渡辺さん、伊東さん、ありがとうございました!
渡辺・伊東:ありがとうございました。
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